雅楽の絃楽器


琵 琶

(びわ)
  


平調・越天楽(ひょうぢょう・えてんらく)



 寸法:(本体)長さ110cm
    (撥) 長さ20cm

 4絃・4柱(じゅ:フレット)の絃楽器です。薩摩・筑前・平家などの俗琵琶と区別するために、「楽琵琶(がくびわ)」と呼ばれます。ペルシャ(現イラン)起源の楽器で、シルクロードを経て奈良時代に日本へ伝わりました。因みに同じ楽器がヨーロッパへ伝わったのが、リュートとなり現在のギターになったと考えられています。

 腹板(はらいた:表板)は沢栗・タモ、槽(そう:裏板)は花梨・桑などで作られており、そのほか黒檀・紫檀・黄楊・檜・象牙など様々な材料を組み合わせて作られます。撥(ばち)は黄楊(つげ)で作られており、他の俗琵琶に比べて小さいのが特徴です。絃は絹で作られたものを使います。

 西洋音楽で絃楽器というとメロディーやアルペジオなどによる伴奏を担当しますが、雅楽における絃楽器はリズム楽器として扱われます。弾奏の最終音を、1拍目の頭とあわせて強く弾き、つかみ所のない雅楽のリズムを明確にする役割があります。

 「楽琵琶」は管弦催馬楽でのみ使用されます。


(琵琶の演奏)


(琵琶の譜面)




(こと)
  


壱越調・春鶯囀(いちこつちょう・しゅんのうでん)



 寸法:長さ190cm 幅23から25cm

 琵琶と同じく、生田流や山田流などの俗箏と区別するために「楽箏(がくそう)」と呼ばれます。楽器の構造や材質は俗箏とほとんど同じ(というより俗箏は楽箏を元に改良された)で、本体は桐で作られています。絃も同じで13本の絹絃を使いますが、「楽箏」の絃は少し太めに作られています。指にはめる爪(つめ:フィンガーピック)は大きく違っており、竹の節を小さく削り出したものを使います。柱(じ)は紫檀などで作られています。

 琵琶と同じく「楽箏」もリズム楽器で、琵琶が小節の頭を明確にしたのと違い、1つの小節の中でのリズムの流れをアルペジオ的な奏法で提示します。

 「楽箏」も管弦催馬楽でのみ使用されます。


(箏の演奏)


(箏の譜面)




和 琴

(わごん)
  


薦枕音取(こもまくらのねとり)



 寸法:(本体)長さ190cm 幅15〜24cm
    (琴軋)長さ7.5cm 幅1.5

 数ある雅楽器の中でも、唯一、日本起源の楽器です。そのためか、古来より「天皇の楽器」と呼ばれるほど楽器としての地位も高く、国風歌舞と呼ばれる古来からの純日本歌曲にしか使用されません。

 本体は桐(古くは榛や檜も使われた)で作られており、絃は6本で絹絃、柱(じ)は天然の楓の枝の中から二股になった部分を切ってそのまま使います。演奏には「琴軋(ことさぎ)」と呼ばれる水牛の角で作られたピックのようなものを使います。

 「和琴」は古くから日本にあったことから、まつわる話や別名が多く、知られているだけでも「倭琴(やまとごと)」・「御琴(みこと)」・「鵄尾琴(とびおごと)」・「東琴(あづまごと)」・「六絃琴」・「むつのを」・「神琴」・「天詔琴」・「書司(ふんのつかさ)」・「御多奈良之(おんたならし)」などの呼び名があります。また、「和琴」は先端部が鵄(とび)の尾のような形になっていますが、これは天の岩戸で天香弓を六張並べて奏したときに、金色の霊鵄が飛んできて弓の先にとまったので、このような形にしたと伝えられています。これらのことから、「和琴」が古くから祭祀で用いられたり、日本神話にまつわるなど、宗教的な意味のある重要な楽器であったことがわかります。


(和琴の演奏)


(和琴の譜面)